あなたにも見つけられる腹腔鏡下手術の名医

私は以前より産婦人科の内視鏡下手術のメーリングリストを運営していますが、ときどき患者さんと思われる方から腹腔鏡下手術のできる病院を紹介してほしいというメールをいただくことがあります。近くなら私のところに来てい ただければいいのですが、遠方の方に聞かれても、どこがいいのかわかりません。

今回、Endosurgeryを開設するにあたって、一般の方からそのような問い合わせをいただいてもお答えすることはできません。でも、ここで手術を勧められているが、腕の立つ医師に腹腔鏡でしてほしいという方むけにネットで腹腔鏡下手術の名医を検索する方法を考えてみたいと思います。

【技術認定医を探す】
日本産科婦人科内視鏡学会ホームページを見てみましょう。(http://square.umin.ac.jp/jsgoe/)
まず、婦人科の場合、すでに日本産科婦人科内視鏡学会で技術認定制度ができ約130人の技術認定医がいます。このホームページの技術認定制度の項目を見れば技術認定医の名簿を閲覧することができます。

では皆さん、http://square.umin.ac.jp/jsgoe/nintei_seido.htmlの技術認定制度を見てみましょう。技術認定医一覧をダウンロードすることができます。たぶん、あなたの地域にも技術認定医がいるのではないでしょうか

第4章第14条の技術認定申請要件をみてみると技術認定医になるためには以下の条件を満たしておかなければなりません。

1)継続3年以上本学会会員であること。
2)日本産科婦人科学会専門医であること。
3)通算2年以上の産婦人科内視鏡下手術の修練を行っていること。
4)術者として100例以上の内視鏡下手術経験を有する。
5)産婦人科内視鏡下手術に関係する学会、研究会、研修会、セミナー等に複数回出席してい ること。
6)国内外において、筆頭演者として学会発表5題以上の内視鏡に関する発表があること。
7)国内外において、内視鏡に関する論文があること(論文5題以上、内1題は筆頭著者)。

この中で、私がちょっと気になるのは4)と7)です。
100例の内視鏡下手術の経験というとかなり手術の経験があるようですが・・・
実は、同業者の間では技術的に本当に安定してくるのは500例を過ぎてからと言われています。(私が申請したときには1000例超えてました)認定医のなかには100例ちょっとという方も、すでに2000例以上という方もおられるわけです。

100例というのは認定に関してならいいのですが、腕の立つ医師を見つけたいという人にとってはモノ足らないかもしれません。大事なのは腕前であって数じゃないとも言えますが・・・

内視鏡に関する論文5題以上(内1題は筆頭著者)というのも、くせ者です。大学病院だと他の医師が論文を書いたときに名前を入れてもらえば著者の一人にしてもらえます。人が書いた論文が4題以上あれば自分で書いたのは(つまり筆頭著者)1つでもこの条件を満たしてしまうことになります。

逆に総合病院などで一人で積極的にがんばっている医師の場合、その人自身が論文を書かないといけないので5題とも自分で書かないといけないのです。実は私が技術認定医をとったときも論文はやっと6題でした。(もちろん自分で全部書いてます。)

というわけで、技術認定医はある程度の基準は満たしている、しかしながら腕が立つかどうかは別。そして、腹腔鏡下手術に腕の立つ医師でも論文の数のしばりで、今のところ技術認定が取れていない人もいる、ということをご理解いただけたらと思います。

【ネットで検索!】
ということは技術認定医は一つの目安で、実際には自己責任で選ばなければなりません。
どうすればより詳しい情報が得られるのでしょうか?

まず、技術認定医一覧には、各医師の勤務先や個人のホームページが載っていますので、それを見てみるという手があります。いかがでしょうか?何か参考になることが載っていましたか?残念ながら、おそらく病院のホームページだと腹腔鏡下手術をやってます程度で、あまり役に立つ情報や実績などは載せられていないのではないかと思います。

★その医師の腕、実績は?
それじゃ、ネットで検索してみましょう。まずGoogle(http://www.google.com/を使いましょう。
キーワードに候補となる医師の名前(この場合、姓と名を分けた方がヒットしやすい)もしくは病院名、腹腔鏡下手術、疾患名(子宮筋腫とか子宮内膜症など)を入れて検索してみましょう。

ちなみに、キーワードに私の名前と、腹腔鏡下手術、子宮筋腫を入れて検索してみると、私の書いた論文の名前とか学会で発表した演題名などがヒットされました。私の実績のすべてがヒットされるわけではありませんが、ある程度の参考にはなるのではないかと思います。

もう少し詳しい情報をお望みでしたら医学中央雑誌刊行会のホームページ(http://www.jamas.gr.jp/)で日本語論文を検索してみるという手もあります。ここは有料なのですが、制限付きながら無料体験版もあります。
会議録(学会発表の抄録)や論文がヒットされます。ちょっとデータが古いかもしれませんが、いろいろ出てきます。

とくに候補の医師がいないのなら、地域(都道府県や市)や思い当たる病院名と疾患名をキーワードにしてみてください。腹腔鏡下手術の得意そうな医師の名前はヒットすることが多いと思います。何らかの参考にはなると思いますよ。

【腹腔鏡下手術機器メーカーに問い合わせてみる!】
もう少し他の方法がないか考えてみたいと思います。こんなのはどうでしょうか?腹腔鏡下手術ではさまざまな医療機器が使用されます。腹腔鏡システム、超音波メス、電気メス、鉗子類、その他にもディスポーサブル(使い捨ての)器具などいろんなメーカーや卸業者がかかわっています。それらのメーカーの担当者はときどき手術に立ち会うこともあり、どの医師が上手いか下手かよく知っています。

実際、彼らは、ときどき知人にいい医者がいないかどうか尋ねられるそうです。しかし、一般の方はこのようなことも知らないし、腹腔鏡下手術機器のメーカーといってもどこがそうなのか知らないでしょう。

そこで、一応、大手のメーカーの名前を挙げておきます。

★ジョンソン・エンド・ジョンソン エチコンエンドサージェリー:
腹腔鏡下手術のディスポーサブル製品が豊富、超音波凝固切開装置(ハーモニックスカルペル)のシェアNo.1。

タイコヘルスケア:多数のディスポーサブル製品を販売、
ベッセルシーリングシステム(リガシュア)が好評。

カールストルツジャパン
腹腔鏡システム、鉗子類のメーカー、泌尿器科、婦人科に人気がある。

オリンパス光学:日本の大手メーカー、先端の曲がるフレキシブル電子内視鏡が消化器外科で人気。

八光(メディカル事業部):日本のメーカーで腹腔鏡下手術むけのさまざまなディスポーサブル器具を開発、販売。

エム・シー・メディカル:カールストルツ等の腹腔鏡システムを販売。

これくらいあれば十分でしょうか?どの会社もホームページを持ってますから、検索すれば連絡先もわかると思います。ただ、問い合わせてみても電話に出た人がよく知っているとは限りません。どうしたものでしょうか?

【そこまでやるか?】

前回は腹腔鏡下手術の医療機器メーカーに問い合わせてみるという話をしました。電話に出た人がよく知っているとは限りません。親身になって相談に乗っていただければありがたいのですが、彼らもそれが仕事ではないので・・・

しかし、彼らが製品を納入している先で手術を受けることになれば、売り上げにも協力することにはなりますから、あまり遠慮することはないのかもしれません。

“**(の病気)で手術を受けようと思っているものなんですが、腹腔鏡でするのにいい病院があればご紹介いただけませんか?○○さん(メーカーの名前)の製品がよく出ているところだったら大丈夫かなと思いまして。”のような感じで尋ねてみましょう。

また、他科(外科など)では腹腔鏡下手術が数多くても、目的の科(婦人科)ではさっぱりやってないということもありますので、そのあたりも確認してみましょう。あなたの地域の営業担当者を紹介してもらうとか、卸先や販売代理店を教えてもらい、そこへ尋ねてみるのもいい手です。

ちょっと図々しいのですが、ここまでやればかなりの情報が手に入ります。うーん、そこまでやるか?と思った方も多いかもしれません。しかし、一生に一度か二度くらいしか普通の人は受けない手術、しかも術者の実力によって大きな差がある腹腔鏡下手術ですから、それくらいやってもバチは当たらないでしょう。

私がもし手術をうけることになったら、たぶん、今までの方法は全部使うと思いますよ。別に腹腔鏡じゃなくても、普通の手術でも心臓血管外科、消化器外科とかだと使う機械が多いのでメーカーとか卸業者に尋ねるのは有効だと思います。

【他には?】

他にも医師の腕前について詳しい人がいますよ。それは患者さんです。

もちろん患者個人が詳しいわけではありませんが患者団体は結構詳しいのです。
子宮内膜症や子宮筋腫ですと下記があります。

子宮内膜症協会(JEMA) http://www.jemanet.org/
子宮内膜症の女性のサポートとよりよい女性医療(とくに子宮内膜症医療)を探求する当事者による非営利組織。エキセントリックすぎるのではないかという医師もいますが、ウェブサイトは情報が豊富で、掲示板もあります。子宮内膜症を指摘されたら是非見ておきたいサイト。有料のメールマガジンも発行しています。

子宮筋腫・内膜症体験者の会たんぽぽhttp://tampopo.bcg-j.org/
子宮筋腫・内膜症体験者の会(自助グループ)。例会、メーリングリスト、セミナーなどがあります。EndoSurgeryと相互リンクしています。

ほかにもたくさんあるようです。ネットで検索してみてください。
それぞれの疾患に対する詳しい情報もサイトにあります。

これらの団体に紹介されて、私の手術を希望する方もときどき来られます。ただ、これらの団体は紹介するのが仕事なのではなく自助グループであることを理解しておきましょう。

そのほかには、誰が上手くて下手か、本当によく知っているのは医師でしょうね。たとえば、麻酔科医、いつも手術に立ち会っているわけですからよく知っています。それからオペ室の看護師もそうですね。他の病院のことは知らなくても同じ病院のDr.同士の比較はできるかも?

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おすすめリンク

日本産科婦人科内視鏡学会

産婦人科内視鏡手術メーリングリストobgyn-endoscopy

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